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はじめに
看護過程(Nursing Process)は,専門職としての看護を実践するための一連のプロセスである。すなわち,対象者の健康や健康上の問題に対する対象の反応を看護の立場から系綻的に判断することに始まり,看護の必要性に応じて目標を設定し,その目標達成のために具体的な計画を立てて実践し,評価する一連の過程である。現在の看護教育の中では不可欠となっており,基礎看護学をはじめ各看護学においてその対象に応じた看護過程を教授している。
しかしながら,その教授内容や指導方法はまちまちであり,同じ学校でも一貫性に乏しく,学生の思考に混乱が生じているともいわれている。
新カリキュラムでは,(1)教育内容の充実を図る,(2)学生の看護実践能力を強化する,の2点が改正の主旨となっている。また,国家試験出題基準に看護診断が明示されたことから看護過程の授業が重要となっていることがわかる。
母性看護学では,その対象者は健常者が主であることから既習の基礎看護学や成人看護学等で既習の問題解決的アプローチでの学習を活かしながら,さらにウエルネス型の看護診断を用いた看護過程をどのように教えたらよいかが課題となる。そこで,新カリキュラムの開始を機会に都立看護専門学校で母性看護学を教授している教員を中心に,母性看護学における看護過程の授業を構築・考案することとし,『マタニティ診断ガイドブック』の著者である青木康子氏をスーパーバイザーに迎え,勉強会を発足させた。以来,2年にわたって試行錯誤し,ようやくまとめることができたので報告する次第である。
検討に当たっては,次の点を考慮しながら行った。
・カリキュラムのなかで母性看護学の位置づけを認識しながら考える。
・基礎看護学および各看護学の授業との関連を考慮する。
・周産期看護(妊婦・産婦・褥婦・新生児の看護)の一貫性を保持しながら看護過程の展開を考える。
・基礎看護教育の一環である母性看護過程を,助産師教育における助産過程との関係を視野に置きながら検討する。
専門職の重要な要件として,高度に体系化された理論や,理論に裏付けられた高度な技術をもつとともに,その職でなければできない方針決定(診断)と具体的行動(治療・ケア)をもっていることがあげられる。看護過程は,診断とケアのプロセスであり,看護職の専門職性や看護の質的向上に大きく関わりをもっている。看護過程について確実に理解して,実践できる基盤を構築することは看護基礎教育を担当する看護教員の大きな役割である。本稿が少しでも役立つことがあれば幸いである。
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