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はじめに
都立看護専門学校7校の母性看護学担当者は,「授業研究会」において教員の質の向上および授業方法の改善を目的とし,研究活動を行っている。その中で母性看護学における看護過程の教授についての現状は,以下のようであることが認識された。
1)ほとんどの看護学校が母性看護学方法論においては,2年次の後半に産褥早期の褥婦のペーパーシミュレーションを用いる方法で授業を展開している。
2)看護学生(以下,学生)は問題解決志向型に慣れているため,母性看護学において生理的な経過をアセスメントする際,「問題が見つからない」と捉え,問題らしき情報を過大に評価する,対象者の健康レベルが理解できない,などの傾向にある。
3)産後の復古は疾病や異常の回復過程とは異なるので,問題解決志向型では対象者の健康状態に応じた援助計画の立案ができない。にもかかわらず,基礎看護学の授業との関連から問題解決志向型で教授している学校や,問題解決志向型とウェルネス型看護診断を合わせた変則的な方法で教授している学校が多い。
4)学生は,基礎看護学や他領域の看護学で学んだ対象者の健康問題を抽出し,問題解決思考で援助計画の立案を行うことに馴れている。そのため,対象者の健康上のよい点や発達課題を意識して抽出するウェルネス型で教授しても,ポジティブな視点で診断する方向に切り替えができない学生が多い。
5)また,看護基礎教育においても,実習病院の看護方式に即したもの,また時代のニーズに即したものを導入することは意義がある。現在,都立病院はNANDAの看護診断が定着しつつあり,カルテ開示や電子カルテの導入に伴う看護記録のありようや対処方法が検討されている。
6)ウェルネス型看護診断は,助産師教育には早くから取り入れられている。しかし,看護基礎教育ではレベルが高いという考えもあり,都立看護専門学校では導入が見送られていた。
そこで,2004(平成16)年度の授業研究では,母性看護学の看護過程の教授にウェルネス型看護診断の導入を検討課題とした。導入するにあたり,まず教員がウェルネス型看護診断についての正しい知識を習得した。そのうえで授業案を作成し,授業を行ったので,そのプロセス・成果について紹介する。
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