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●過密カリキュラム下でいかに学生を育てるか
平成21年にカリキュラム改正があり,看護実践力をつけるための教育課程が編成され,その理想に向けた教育が始まっている。一年間が経過し運営していく中で,カリキュラムは過密になり,学生にゆとりのない状況となっている。このような状況で,自ら考え自ら行動できる学生を育てることはできるのだろうか,どのような教育法を取り入れればそのような学生が育つのかを模索していた。
その問いに答えたのが本書である。これまで「ポートフォリオ=意志ある学び」とは多少なりとも知ってはいたが,実際に教育上どのように運用できるのかは分らないままであった。本書はポートフォリオとは何か,どのように実践するのか,プロジェクトの学習の進め方まで具体的に示している。しかも,授業・実習からスペシャリストを目指す内容まで,活用範囲が広く紹介され,ポートフォリオ学習について初めての方から,実際に導入したい方まで幅広く活用できる構成になっている。著者が看護のめざすところ,看護教育の中で問題になることについて,現状をよく把握されており,読み進めていくと現実に起きていることが手にとるようにわかる。そして胸中の疑問や戸惑いを的確にと言い当ててくれており,共感でき次々と読み進めたくなる本である。そしてこの本の魅力的なところは,現場の問いに対応しながら具体的な例を示し,ポートフォリオ評価とプロジェクト学習を紹介している点である。読者がイメージしながら読めるので非常にわかりやすい。ある程度わかりかけたところへ,実際の取り組みを紹介しているので納得いくものとなる。例えば“情報を見極める力のコーチングの場面”では「どういう見方をしたらいいと思う?」から始まり,その時の姿勢・進め方を紹介している。コーチングということばから実際の行動のイメージ化ができるということは,読者が容易に取り入れやすいものである。
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