書評
―『そのまま使える医療英会話[CD付]』―医療現場で必要な英語情報と実践のギャップを埋める一冊
迫 和子
pp.875
発行日 2010年10月25日
Published Date 2010/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101582
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「日本の常識は世界の非常識」とも言われるように,日本で当たり前と考えられている流儀が海外で通用しないことは決して少なくない。特に対人コミュニケーションでは,これがトラブルの原因となる可能性もある。ところが日本の医療現場における外国人患者への対応はこれまで,医療従事者の個人的な経験則に委ねられがちだった。
本書ではそれを「外国人患者との効果的なコミュニケーション10か条」として明快にまとめている。「平易な英語で話し,専門用語はなるべく使わない」「患者の母語が英語であるとはかぎらない」「自分が話した内容を患者に繰り返し言ってもらい,情報が正確に伝わったかを確認する」など,具体的な方法論はどれも分かりやすく実際的だ。本書の全編を通じて,これに共通する姿勢が根底に感じられる。相手に対する効果的なコミュニケーションとは,医療従事者と外国人患者の間の問題であるだけでなく,著者と読者(学習者)との間に横たわる課題でもある。本書の著者は,数多くの医療英語表現のエッセンスをいかに効果的に学習者に伝え,身につけてもらうかという点に,特に心を砕いている。ひとことで言えば,大変ユーザー・フレンドリーな本だ。
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