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はじめに─老年看護のあたらしい潮流
老年看護実習で学生たちに看護過程の展開を指導する際,かつては疾患や障害ごとに,教員たちが教育上良いと判断した種々の参考書を用いていた。1冊に集約されていたならば,どんなにかよいのにと思うこともあった。また,老年看護学の考え方は,中島紀惠子監修1)(現在,北川公子監修2))の系統看護学講座『老年看護学』をもとに教授してきたものの,その考え方を反映した老年看護過程の参考書がなく,学生への個別指導時に教員たちが口頭で説明を補っていた。
そのようなとき,『老年看護過程+病態・生活機能関連図』3)(以下,本書)出版の話をいただいた。まさか自分たちで編集・執筆するとは考えてもいなかったが,この際,老年看護学実習で学生たちに学んでほしい内容を1冊に盛り込んだ参考書を作成しようと考え,引き受けさせていただいた。
しかし,これまでの看護学実習における看護過程(Nursing Process)は,「問題解決型思考」が中心であった。「目標志向型思考」はじめ「病態・生活機能関連図」など老年看護学の考え方を反映した新たな看護過程の展開方法を導入した本書を,全国各地の老年看護学実習を担当される教育現場の皆様に受け入れていただけるものなのか,チャレンジでもあった。このため,本書の枠組みと構成に悪戦苦闘し,かなりの時間を要してしまい,2008年に刊行となった第1版では内容の洗練といった点にまで行きついてないことは否めない。
救われたのは,想像以上に老年看護学担当教員はじめ高齢者施設や訪問看護ステーションに勤務する看護師の皆様から,本書の考え方に賛同する声を頂戴したことだ。何よりも,老年看護学に対して同じ志をもつ仲間がこんなにも多くいたことを知り,心から嬉しく思っている。
本稿では,あらためて生活機能からみた老年看護過程の考え方について提示し,本書の工夫点と活用上のポイント,現状の課題と今後の改訂に向けた方向性について述べる。
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