特集 生活機能・目標志向からみた老年看護
目標志向型思考で探索する高齢者の“もてる力”
北川 公子
1
1茨城県立医療大学保健医療学部看護学科
pp.856-861
発行日 2010年10月25日
Published Date 2010/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101576
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はじめに─「患者が良くなった」とは
どの実習科目も同じだろうが,老年看護学実習を終えた学生には,「楽しかった」という者と,不全感をかかえたままの学生とがいる。もちろんそのどちらにも属さない顔つきの学生も少なくないのだが。後者の学生に不全感の理由を聞くと,「毎日,同じことの繰り返しで,患者さんはちっとも良くならなかった」という。その一方で,楽しかった学生たちは,「患者さんがどんどん良くなったから」と感想を述べる。この違いはどこからくるのだろう。
実際,学生が“良くなった”と感じた患者の状態が,そう劇的に変わったわけではない。例えば,患者のもぞもぞしている様子から,「尿意かもしれない」と推測してトイレに誘導したら排尿できた,といった体験を,「良くなった」と喜ぶのである。
患者の状態に変わりはなくても,どこに注目するか,その焦点の当て方によって,学生の感じ方は大きく異なる。不全感の強い学生は,解決に至らなかった尿失禁への援助に疑問を残し,満足感の強い学生は,可能性を示した患者とそれを見出した自分自身に発達・前進の芽を見たのかもしれない。この相違に,問題解決型思考と目標志向型思考1)が関わっていると考えられる。
なぜ老年看護実践には,目標志向型思考が向くのだろうか。
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