- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
■はじめに
ウズベキスタンの看護教育改善プロジェクトの大きな特徴は,本連載の第1回に述べた通り,看護の7領域のすべてのカリキュラムをCONに基づいた看護教育に変更したことである。
各領域のカリキュラムを検討するに先立って,今までウズベキスタンには存在しなかった3つの領域(老年看護,精神看護,地域看護)を含めて7領域にすることと,各領域の時間配分を決定するまでに侃々諤々の議論が繰り返された。老年看護と地域看護は比較的受け入れが容易であったが,精神看護に関しては精神疾患患者に関する偏見から受け入れまでに時間を費やした。それぞれの領域が,すでに確保している時間をなかなか譲り合うことをしないために,各領域の時間配分に関しては,日本側がかなり強引に議論を先導した経緯もある。
また成人看護は,最後まで診療科別看護にこだわり変更できなかった。これは,ウズベキスタンの医療施設が消化器科,眼科等診療科に特化した専門病院であり,1999年に救急医療センターができるまで総合病院という施設がなかった。このため,看護師は専門病院で働けるよう診療科別に教育を受けることが重視されていた。また,海のないウズベキスタンでは,ヨウ素不足から甲状腺機能障害ももつ者が多く,内分泌疾患は重要であるとの認識から,最後まで診療科別との主張は曲げられることはなかった。このため,現状では成人看護においてのみ,診療科別の項目立てを残した教案プログラムとなった。
ウズベキスタンは,1991年に旧ソ連から独立するまでは,東西冷戦時代の大国の1つであったというプライドから,国際水準に遅れていることを認めたがらないこと,本音を語りたがらないことなどが,双方の言葉のバリアとともに,プロジェクト開始当時の検討を難しくした。しかし,プロジェクト終了を迎えた今は,プロジェクト開始当時のこれらの困難は,過去の語り草として忘れ去られるくらい双方の意思疎通はよく5年間の歴史を感じる。
今回は「成人看護」「老年看護」「精神看護」のワーキンググループ(以下,WG)の活動を中心に改善カリキュラムの作成について紹介させていただく。
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.