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看護哲学
岸 信行
1
1中央大学文学部
pp.679-688
発行日 1978年11月25日
Published Date 1978/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907265
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序:考察の視点
‘看護哲学’という表題のもとに,これから私が語らんとするのは,‘看護’の哲学的な解釈である.哲学とは,もとより,すべてのものを,その原理・本質にまで遡(さかのぼ)って考えようとする学問である.したがって,看護を哲学的に解釈するということは,とりも直さず,看護を支える根本原理,その中心的本質と課題について,体系的に考察することを意味している.それは,いわば‘看護’が支障なく行われる諸条件の吟味・探究であると言えよう.
‘看護’を哲学的にとらえる場合,忘れてならない視点が2つある.その1つは‘看護’を個人的側面からとらえる視点であり,もう1つは,もっと大きな人類の歴史・文化というような‘時間的な流れ’と‘空間的な広がり’の中でとらえる視点である.もちろん,この2つは,はっきりと区切ることできず,互いに密接にかかわり合っている.その理由は,‘人間’という存在が,個人的な在り方をしていると同時に,社会的・歴史的な在り方をしているという事実に基づいている.
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