特集 精神「科」看護を教えるということ
精神科における「コミュニケーション」を知る―実習で学生が遭遇する場面と教員の対応
深見 恵子
1
1帝京平成大学ヒューマンケア学部看護学科
pp.592-595
発行日 2008年7月25日
Published Date 2008/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100958
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はじめに
精神科での臨地実習において「患者さんとコミュニケーションが取れない」と悩む学生は多い。しかし「コミュニケーション」とは取れる取れないといった性質のものではなく「止められない」ものである1)。よって,学生の言う「コミュニケーションが取れない」とはその言葉通りの意味ではなく,たとえば「学生自身が理想と描いている看護学生─患者間のコミュニケーションとは違うコミュニケーションであったため困っている」などの意味である場合が多い。
また,多くの学生は,精神障害者との接点がないためか本人の未熟さゆえか,患者を理解しようとせず,偏りを築き,自分にとって都合がよいように実習を終えようとする傾向にある。例をあげると,患者の日常生活に過度に介入し,必要以上の「看護計画」を実施するが,実際は患者の負担となっていた……,などである。これはいわば学生自身が「自分のイメージした実習」をするための行動であり決して悪気があってやっていることではないのだが,患者よりも学生自身を優先して考えてしまっているため,コミュニケーションを客観的に振り返る際に支障を来す恐れがある。
これらの傾向を抱えた学生達が体験する精神科特有のコミュニケーションの「困難さ」を,場面の分析を通して「奥深さ」に意味付けし直すのが本稿の目的である。
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