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書評 ―『せん妄であわてない』―臨地実習でせん妄に遭遇する学生の指導にも最適
山本 君子
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1了徳寺大学健康科学部看護学科
pp.785
発行日 2011年9月25日
Published Date 2011/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101875
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せん妄ケアだけに焦点を当てた参考書は,ほとんど見当たらなかったように思います。著者が「はじめに」のなかで述べているように,現在,クリティカルケア領域におけるせん妄は,ICU在室日数・入院日数の延長,退院後6か月での死亡率の独立予測因子であることが報告され,ICU退室後のPTSD様症状との関連が指摘されています。また,65歳以上のICU入室患者では70%以上という高い発症率の報告があるなか,その多くは見落とされているという指摘もあります。このような現状を踏まえると,せん妄を“看護の力”で早期発見し予防していきたいと思いませんか。“看護の力”を発揮するためにも本書が活用できます。
私は高齢者看護を担当していますが,学生が受け持つ患者でせん妄が出現していることも珍しくありません。せん妄ケアの難しさを,学生と臨地実習で経験したことがありました。学生が実習初日,入院してきたばかりの78歳の女性を受け持つことになり,患者と大変楽しそうに会話ができていました。ところが,翌日の朝,学生が挨拶に行ったときのことです。涙を浮かべながら小走りに私に近づいて来たため「どうしたの?」と尋ねると,「患者さんがベッドに縛りつけられていて……,大きな声で『助けてくれー』と叫んでいるんです。そして,足をバタバタさせながら掛け物を蹴飛ばしているんです。昨日はすごく楽しそうにしていて元気だったのに……。私はどうしたらいいのかわからないんです……」と報告してきました。臨床ではこのようなケースは多く,看護師たちもどのようなケアが必要なのかと試行錯誤しているのが現状ではないでしょうか。ただ,それが学生には十分伝わらなかったのだと思います。
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