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「流れ」という言葉で,多くの人が思い浮かべるのが最も身近な存在である川の「流れ」であろう。しかしこれとて簡単に一括りにできないほど,状況によっていろいろな表情を見せる。山間の清流,渓谷の急流,大雨の後の濁流,川の淀み,などなど。「流れ」には,早い,遅いで表現されるような物理的(時間的)要素,澄んでいる,濁っていると表現されるような質的要素があることがわかる。またこの流れを容れる川も,実に多様な形をしている。
私たちの身体の中には,幾筋もの流れがあり,それぞれ独自の構造によって支えられている。例をあげると,身体の中の隅々の組織まで環流している血液は,文字通り血流となって血管という管の中を走る。血管はどこも同じ構造というわけではない。心臓から出た圧の高い血液を運ぶ区間は高圧区間とよばれ,ここを受けもつ動脈は内膜,中膜,外膜の明瞭な3層構造を備え,この圧に耐えられる構造をしている。つまり,弾性線維のよく発達した中膜をもつ弾性型動脈(大動脈とその緒分枝)とこれに続く平滑筋成分が中膜の主成分をなす筋型動脈である。径10~100ミクロン前後は細動脈と呼ばれ,その収縮拡張によって,血圧の調節に大きな役割を果たす。このため抵抗区間とも称される。血液から組織へ,またその逆の物質の出入りは,毛細血管から毛細血管後細静脈の領域で行われる。この領域では中膜は消失し,内皮細胞(内膜),基底膜,周皮細胞のみからなり,物質の通過を容易にしている。このあとは心臓へ還流する血液を運ぶ静脈となる。この部分は血液の圧が低く(低圧区間),それを反映して静脈の壁は3層構造をもつが,動脈に比して薄い。以上は血流と血管についてのあらましである。
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