特集 災害看護の現場から─災害看護学構築に向けて・1
災害とこころのケア
前田 潤
1
1室蘭工業大学共通講座
pp.129-133
発行日 2006年2月1日
Published Date 2006/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100217
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災害
災害は突如襲ってくる。圧倒的な破壊によって日常生活を一変させる。知らず知らずのうちに抱いていた大地への,海への,堤防への,そして住居への信頼が崩壊し,すべてが恐怖の対象となり,凶器となる。命の危機であり,恐怖体験であり,大切な人々や財産や,見慣れた風景と家族のアルバムが奪われる。
神戸にある「人と防災未来センター」に行ったことがあるだろうか? あるときに何の予見もなくセンタースタッフの案内するままにエレベーターに乗り,防災未来館の4階に進んだ。そしてそれは始まった。阪神・淡路大震災当日午前5時46分のそのときの再現映像である。崩れる大地,家屋,高速道路,ビル,街。大音響とともにこれでもかと,私を襲ったのである。人々はこれを実際に体験したのだ。あの日,1995年1月17日に。手すりにつかまったまま衝撃を受けた。映像を見た後,瓦礫の街を再現した廊下を進むと,今度は映画が震災後を一人称で語る。胸が締め付けられ,目を拭った。横に座った男性も,若者も,ご夫婦も同じであった。彼らが震災にどのような関わりのある人たちなのかはわからない。しかし,実体験のない自分も映像の中の震災に圧倒されたのだ。
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