連載 災害を支える公衆衛生ネットワーク~東日本大震災からの復旧,復興に学ぶ・9
こころのケアとは―ポピュレーションアプローチの視点から
佐々木 亮平
1
,
岩室 紳也
2
1日本赤十字秋田看護大学看護学部看護学科
2公益社団法人地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター
pp.983-988
発行日 2012年12月15日
Published Date 2012/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102613
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
被災地の実情に学ぶこころのケア―被災県での自殺の状況
東日本大震災前後で比較すると,人口比では岩手県,宮城県では明らかに自殺は減少しているが,福島県ではほぼ横ばいになっている(図1)1).この違いを軽々と評価,考察することはできないが,どの被災地でもハイリスク者へのアプローチ(ハイリスクアプローチ2))は専門職によって丁寧に行われていたのに対して,被災地に蔓延するリスクへのアプローチ(ポピュレーションアプローチ2))は差が大きかったのではないかと考えられる.すなわち,岩手県と宮城県では結果的に同じ被災状況にある人たちが互いの存在を避難所等で語らずとも知り合い,被災で各々が抱えたストレス(リスク)と向き合うことができる環境が生まれていたのとは対照的に,福島県では原発事故のため避難がコミュニティ単位ではないばかりか,福島県内外への分散を余儀なくさせられ,最初から同じような境遇の被災者がいない状況に置かれてしまい,結果として各々のストレスを克服するための環境に差が生じたのではないだろうか.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.