特集 看護学実習 教員・指導者・学生,三者の体験から
第1部 体験から学ぶ「看護学実習」をめざして
実習指導という体験
実習指導を見えるものにするために―教員の感情体験を導きの糸として
小宮 敬子
1
1日本赤十字看護大学
pp.941-945
発行日 2005年11月1日
Published Date 2005/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100159
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はじめに
看護大学に職を得て,実習指導に本格的に取り組み始めたとき,これは大変なことを始めてしまったものだと思った。指導の場では思いがけないことにいろいろ直面するものの,一体何が起こっているのか,そこにどんな意味があるのか,最初の頃はよくわからなかった。思いがけない学生の言動に驚き,苛立ち,動揺した。自分の無力さやふがいなさが目について恥ずかしく思うこともあった。だから最初は,実習の時期は憂うつで仕方なかった。
それでも教員になって10年が経ち,実習で起こっていることが少しずつ見えてくるようになった。それにつれて,実習指導をおもしろいと思えるようにもなった。また,若い教員をサポートする役割を担うようになって,自分の経験してきたことが必ずしも私個人の特殊な体験ではなく,何かそこに普遍的なものがあるように思えてきた。
実習指導は,学生との関係をはじめとして,患者や現場のスタッフ,同僚の教員など,さまざまな人間関係の中で展開される。ここでは私が体験したある出来事を取り上げ,そこで揺れ動いた感情を導きの糸として,何が起こっていたのかを考えてみたいと思う。
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