臨床に資する看護研究―私の研究指導 第1部 学生に対する私の研究指導
―研究を振り返って―自らの感情体験を考察して
野川 智子
1
1大宮赤十字病院
pp.915
発行日 1998年11月30日
Published Date 1998/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901949
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私は今年大学を卒業し,婦人科・小児科病棟で働いている.日々,処置をこなすのに精一杯,技術の習得や疾患の理解,薬剤に関する知識の蓄積に追われ,新しい環境に適応するためには自分の感情などにいちいちかまっている暇などなかった.自分の感情に目をつむり,動揺を避けて日々を穏やかにすごそうとしていたのだが,一方で空しさが募っていたのを感じていた.そのようなときに先生から卒業論文を雑誌に掲載してみないかという便りが届き,考えるきっかけを与えてくださったことにとても感謝し,喜んで引き受けた.
ところが当時を思い返すことになぜか気が進まなくなり,暫く何もせずに過ごしてしまった.ようやくそろそろ取りかからなくてはと,論文のコピーを探し始めたが,なかなか見つからず,ついに部屋の隅に積み重ねられた雑誌の山の中から,クリップで止められただけの論文が出てきたとき、私は,本当はこの論文を他人に公表したくはなかったのだと気づいた.
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