連載 ユースカルチャーの現在・60
青年の犯罪について―ドストエフスキーの『罪と罰』と『地下室の手記』から
渡部 真
1
1横浜国立大学教育人間科学部
pp.704-707
発行日 2005年9月1日
Published Date 2005/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100115
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登場人物
A 大学教師:教育関連学部で社会学を教えている。50歳台,男性。
B 大学生:教育関連学部の4年生。20歳台,男性。
はじめに
A これまで4回にわたって少年非行の問題を扱ってきましたが,今回はそのまとめをしたいと思います。
B どんな方法でやるのですか?
A ロシアの作家,ドストエフスキーの小説を使いながら,現代の青年の犯罪について考えてみたいのです。
B ドストエフスキーというのは,どんな小説家なんですか?
A 文芸関係の専門家による,全世界の小説家・オールタイム・ベストテンをしたら,おそらく第1位を獲得するのではないかと思います。僕も大好きで,若い頃から非常に影響を受けています。1821年に生まれて,1881年に60歳で亡くなっています。
B ずいぶん昔の人なんですね。
A でも,ドストエフスキーの小説は,その後の人間のものの考え方に,はかり知れない影響を与えましたし,彼の予言した方向にその後の世界は進んでしまったともいえるんです。だから彼の小説には,現代社会のさまざまな問題がちりばめられています。
B たとえば,どんなことがありますか?
A 前回取り上げた,「青年がひきおこす動機のはっきりしない犯罪」のことを正面から扱っています。また,「退屈と苦痛」の問題も『カラマーゾフの兄弟』という作品の中で,「自由と権力」といった角度から取り上げています。
B 今回は,ドストエフスキーのどんな小説を扱うんですか?
A 『罪と罰』と『地下室の手記』という2つの作品を取り上げたいと思います。
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