連載 感染症 Up to Date・67
牛海綿状脳症と異型クロイツフェルト・ヤコブ病
池田 正行
1
1国立犀潟病院臨床研究部
pp.162-165
発行日 2002年2月10日
Published Date 2002/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902576
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BSEとはどんな病気か?
牛海綿状脳症(BSE:Bovine Spongiform Encephalopathy.俗称,狂牛病)は,1986年に英国で初めて発見された。この病気にかかった牛の脳を顕微鏡で見ると,非常に細かい穴があいて,まるでスポンジ(海綿)のように見えるため,この名がある。BSEに感染してから発病するまでの潜伏期間は2〜8年で,発病する牛の平均年齢は4〜5歳となっている。脳の神経細胞が冒されるため,発病した牛は行動異常を起こし,歩くこともままならなくなり,発症後2週間から6か月で死んでしまう1)。
BSEの病原体はプリオンと呼ばれる特殊な蛋白である。プリオンにも正常なものと異常なものがあって,正常プリオンは私たちの体内にもともと存在している。しかし,これとは立体構造が異なる異常プリオンが外から入ってくると,まるで玉突きのように正常なプリオンが異常なプリオンに次々と変化すると考えられている。こうして異常プリオンが蓄積すると,やがて神経細胞が破壊されてBSEが発症する。異常プリオンは一般の細菌と違って,調理の熱でも,冷凍しても不活性化されない。
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