調査報告
母子保健事業委譲に伴う問題点—市町村保健婦に対する調査結果より
尾島 俊之
1
,
柳川 洋
1
,
高野 陽
2
1自治医科大学公衆衛生学
2国立公衆衛生院
pp.978-983
発行日 1995年12月10日
Published Date 1995/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901267
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●要約
基本的な母子保健事業が平成9年度から市町村に委譲されることに伴い,その過程で生じる問題点および現時点での対応の概略を明らかにすることを目的とした。全国115市町村の保健婦を対象に,郵送法により調査を行った。
委譲の検討を始めていない市町村が見られ,早急に実質的検討を開始すべきである。また,都道府県・保健所や国は,人的援助の可否や,財源措置を早期に市町村に示すべきである。保健婦らのマンパワー不足に対して,市町村は保健婦の必要性を認識し,財源措置をすべきであり,また都道府県・保健所は市町村保健婦らの研修を実施すべきである。医師確保に関しては,市町村の努力意識の向上と,市町村外も含めた委託の検討が必要であり,保健所は医師会との調整を努力すべきである。医師の資質面の不安に関しては,住民が複数の医療機関を選択できる健診体制や,母子保健マニュアルなどの整備が重要である。
予算措置に関しては,母子保健の重要性を,市町村長や財政部局に理解してもらうことが重要である。健診において,流れ作業的傾向になる恐れがある。市町村では一層のマンパワーの充実を図るとともに,国や都道府県・保健所は,委譲の進行をチェックする際に,形式的な実施主体や受診者数のみではなく,相談・指導の質に着目すべきである。また,担当保健婦は気持ちの余裕やカウンセリングマインドを持つことが大切である。
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