調査報告
在宅脳卒中後遺症者の居住する集合住宅の家屋改造指導
金沢 善智
1
,
上村 佐和子
1
,
下田 裕子
2
1弘前大学医療技術短期大学部
2赤羽病院
pp.984-989
発行日 1995年12月10日
Published Date 1995/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901268
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●要約
本報告では,在宅障害者の自立を促すために集合住宅の一部分を家屋改造した中で,一戸建て住宅における家屋改造では経験したことがなかったいくつかの問題点や家屋改造の実施結果などについて考察した。
その結果,私的スペースの家屋改造においては,ややスペースの面で制限を受けたものの,一戸建て住宅とほぼ同様の方法により,良好な結果となることを確認した。障害者や高齢者が高層階に居住する場合には,特に孤独感が強まり,ストレスフルになりやすいので,外部社会との接触回数を多くするような建築的配慮が家屋改造時に必要である。さらに,共用スペースの家屋改造においては,理学療法士が家屋環境評価を行い,その結果をマンションの住民で構成されている管理組合に提示し,全住民納得の上でスロープの設置が行われた。そして対象とした障害者は通院や外出が可能となった。しかし,地震や火災時の避難方法などの確保は不十分であった。
集合住宅での家屋改造では,私的スペースの改造だけでは不十分であり,共用スペースに及んだ家屋環境評価と家屋改造の実施が必要であると考える。また,在宅障害者に対する一個人病院の理学療法士のみでの家屋改造指導には時間的に限界があり,医師や保健婦などを含めた「家屋改造チーム」の早期結成が,集合住宅に限らず,適切な家屋改造を行うための鍵となる。
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