特集 大規模災害対策における保健婦の役割
[被災地の保健婦の声]
須磨保健所における緊急保健活動
小林 千代
1
1須磨保健所
pp.694-698
発行日 1995年9月10日
Published Date 1995/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901205
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はじめに
大震災から4か月を経た今,須磨区の避難所は震災直後の66か所(避難者:約2万1000人)から40か所(避難者:約3200人)と推移している。少しずつではあるが街は家屋の修理や撤去が進み,復興のきざしを見せている。
一方で,仮設住宅入居後の一人暮らし老人の孤独死が新聞にとり上げられ,一人暮らし老人にとってそのことは深刻に受け止められている。たとえばある日の午後5時30分すぎのことである。避難所の代表者から「仮設住宅入居前の88歳の男性が自殺を計った。すぐに来てほしい」と電話があったので病院へかけつけた。そのお年寄りは,震災前には“奇人,変人”と陰口を言われていても隣人と距離を保てた。しかし,さまざまな人がいる避難所での共同生活に適応するのは困難で,被災した身内とのトラブルや仮設住宅入居前の不安などがあり,喉や腹部を傷つけ死のうとしたらしい。幸い軽症だったが,震災の影響は人の気持ちに長く深く進行し蝕んでいる。
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