談話室
保健所活動によせて
西尾 雅七
1
1京都大学医学部公衆衛生学教室
pp.492-493
発行日 1967年9月15日
Published Date 1967/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203523
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〔Ⅰ〕
わが国で保健所活動が開始されたのが昭和12年だから,ちょうど今年で30年を経たわけである。この間昭和22年には保健所法の全面改正があって,今日の保健所でみられる活動が開始され,また公衆衛生施策は国(厚生省)で企画され,都道府県(衛生部局)を通じて保健所にまで流されてきて,ここで実施されるという衛生行政の一貫した体系がつくりあげられた。なお昭和35年には人口密度,産業構造などを考慮してより効果的な活動を求めて保健所の型別の再編成が行なわれ,それとともに保健所の基準や職員の定数が定められ今日に至っている。
敗戦以来今日までの間に国民の保健状態が著しく改善されてきたことは,衛生統計によく示されていることであるが,この国民保健の著しい向上によって国民の疾病構造は急激に変化し,死亡率の低下と出生率の顕著な低下によって,わが国で人口の老齢化が急速に進行する気配を示しており,それに伴い国民保健のよりいっそうの改善には,わが国の医療制度そのものを根本的に検討する必要に迫られている。また高度経済成長政策が強力に推進された結果,公害問題,大都市およびその周辺地域への人口の加速度的な集中による住居および環境衛生上の問題,さらには交通災害の激増といった問題などが都市とその周辺に発生している。
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