特別寄稿
喪失体験被害者(被災者)に接する人に
大久保 恵美子
1
1富山県立黒部学園
pp.377-382
発行日 1995年5月10日
Published Date 1995/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901144
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はじめに
平成2年10月12日,当時18歳だった最愛の息子を,飲酒ひき逃げにより奪われた私は,悲しみと怒りで混乱し,事件直後はただ悪夢の中を漂っていました。事件から1〜2か月が経過し,マヒしていた感情が少し戻りだした頃,加害者に対する憤りと深い悲しみが襲ってきました。
事件以後,周囲からかけてもらったさまざまな励ましや,いたわりの言葉も,この頃になると「もう泣かないで頑張るように」という意味合いの言葉になるため,怒りや悲しみの感情を口に出すことが憚られ,沈黙しがちになります。誰にもこの辛さは理解してもらえないと思え,周囲の人々と話をすることも顔を合わせることも苦痛になり,孤立しがちになります。
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