現代のカルテ
加害者と被害者
野口 肇
pp.48
発行日 1965年10月1日
Published Date 1965/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203063
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Ⅰ
8・15終戦記念日がまたやってきました.それもことしは20周年にあたるわけで,各方面でいろんな行事が盛大に行なわれました.また新聞・雑誌・放送などはこの日にむけて,いっせいにハデなカンパニアをくりひろげました.いわく「あれから20年」「20歳になった新日本」「父の戦記」「あのとき私はここにいた」などなど.同様,広島と長崎に原爆が投下されてからやはり20年目,これにちなんだいろんな記念行事もありました.
たしかに20年という歳月は,あらためてふりかえるとき,無限の感がいをよびさまします.中国戦争から太平洋戦争,その終結をみるまで,まことにながい痛苦の連続でした.この期間,戦争のおかげで甘い汁をたっぷり吸ったごく少数の連中は例外だが,大部分の日本国民は,あるいはいのちをうしない,あるいは家を焼かれるなど,血と涙をこぼしつづけたのです.おもいだすさえつらい戦争体験でした.じじつこんどあれこれの報道機関が公募して発表された多くの手記は,前線のものにせよ,銃後(当時こういわれた)のものにせよ,どれも胸にせまります.もう二度と戦争をすまい,あの悲劇を味わわないようにしたいと,つくづく感じます.「平和への誓い新たに」と軒なみ新聞はかいています.
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