発言席
キラキラと輝く目
中澤 正夫
1
1みさと協立病院
pp.5
発行日 1994年1月10日
Published Date 1994/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900851
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この間,長野県の佐久へ講演に招かれて行った。佐久は私が新婚生活を送った地である。そして,私が自分の精神科医としての方向を決めた地である。どういう精神科医になるべきか,どうしたらなれるかを,厳しく教え鍛えてくれた患者さん,家族,看護婦さんや先輩医師たち,そして保健婦さんが今も健在である。その日,会場には,かつて一緒に学んだ臼田町や八千穂村の保健婦さん,佐久病院の看護婦やMSWが待っていてくれた。
30年前,私は南佐久の山村をひとりで歩いていた。雪の降りしく八千穂村,紅葉に埋まった川上村,そして野辺山の開拓村。よくなって退院した患者さんが,どうして悪発再入院してしまうのであろう,退院後,どんな生活をおくっているのであろうと,私は患者さんを訪ね歩いていたのである。そこで私がみたものは,通院を続けることなどとてもできぬ貧しさであり,患者であるが故に近隣に気兼ねし孤立し,閉居している姿であった。
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