巻頭カラー 潤いのある日常—チェシャーホームでの暮らし・第11回
よろこびと希望がいのちを輝かせる
石原 康博
,
社会福祉法人ひょうご障害福祉事業協会
Ishihara Yasuhiro
pp.770-771
発行日 2015年11月15日
Published Date 2015/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200240
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チェシャーホーム「はんしん自立の家」の入居者だった松本いくよさんは,8年前に腎臓がんで亡くなられました。発病してから入退院を繰りかえしながら2年余を過ごされました。積極的治療はしない方針でしたが,1回目の入院時に「ガンバル」と言われて,薬が処方され3日後に快方に向かいました。そして車いすのポケットからコンサートのチケットを出してこられました。退院も外出も無理かと思いましたが,松本さんと医療チームの目標は「コンサートを聴きに行く」ことになり,驚くほどの回復力で大阪城ホールに行くことができました。それから数カ月後,再度入院し,血圧が下がり始めたとの連絡を受けて病室へ行きました。「もうすぐ『はんしん自立の家春祭り』ですが,歌は歌われますか」と聞くと,目が開き「歌う…」と返事をされました。大好きなスタッフを呼び歌の練習を始めると血圧が上がり始め,そして「春祭り」に一時外出して参加されました。
しばらくして容態が悪化し,もう限界かと思われ「お母さんのところへ行きますか」と言おうとしましたが,「お花見で歌は歌われますか」と尋ねてみました。笑顔が生まれ,一緒に歌うとまた血圧が上がり,外出してスタッフとのデュエットが実現しました。点滴も受け付けない身体でした。よろこびや希望がいのちを輝かせることを目の前で教えられました。
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