連載 私が休日に出会った本・8
輝いている言葉に出会う
加納 佳代子
1
1八千代病院看護部
pp.641
発行日 2001年8月10日
Published Date 2001/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686902073
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淡い恋心をつぶやく,少年のような老人。激しい恋心を思いつめたように語る老女。いとおしさを伝える眼差し,恥らう指。こうも素直に自らの想いを表わす人々を見て,「いい歳をして」と蔑む人がいると,私はその貧しい感性を哀れんでしまう。私は,精神病院で暮らす,あっけらかんと愛を語る人々が好き。
夜中にオムツを交換していると,彼女を紹介してほしいと看護婦に手を合わせた人。看護婦は「明日紹介するからとりあえず寝ましょう」と答えた。朝になると「もう1つ頼みがある」と言う。「彼女のためにも,ちゃんと働きたい。仕事も紹介してほしい」と。誰だって,愛する人と自分のために仕事が必要。自分の言ったことは次々に忘れていくけど,言ってるそのときは本気。痴呆病棟で暮らす人々は,新入りがいい女ならいそいそと近づき,いい男なら奪い合う。
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