連載 ほんとの出会い・23
やがてくるシングルライフを輝かせる
岡田 真紀
pp.135
発行日 2008年2月15日
Published Date 2008/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101009
- 販売していません
- 文献概要
親しい友人がこのところ落ち込んでいる。彼女はまだ50代後半だが,10年前に夫が病気で急逝した。とても仲が良いご夫婦で,突然に近い死だっただけにそのショックも大きかった。けれども,当時は仕事もしていたし,母親の介護もあり,毎日の忙しさに夫をなくした喪失感に浸る暇もなかった。その彼女がひどく寂しさを感じたのは,3年前,次男が結婚したとき。お相手のお嬢さんも気に入っている。心から二人が結婚できて良かった,と思った。けれども,息子が独立する寂しさは別物。何もやる気がおきないほどだった。
そして,今また寂しさが襲ってきた。仕事の関係で違う県に住んでいた長男が海外赴任すると言うのだ。息子のためにはいいことだと頭ではわかっている。でも,心にはすきま風が吹く。夫に先立たれた後,2人の息子を大学にやるために必死で働いてきた。離れている息子が家に帰ってくる日には,友だちとのお出かけを取り消してでも,あったかいお味噌汁を作り,好物の魚を焼き,野菜の煮物を用意して待っていた,その自分の心の行き場所を失った気がする。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.