連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・17
金色に輝く星になった人たち
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.776-777
発行日 2005年8月1日
Published Date 2005/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100267
- 有料閲覧
- 文献概要
星に祈りを
お産の呼び出しがかかるのは,多くは夜間だ。クリニックまでは歩いて5分程度。私は坂道を下りながら毎回夜空を見上げる。大抵,夜空一面には星が輝いている。“このお産がどうか無事に終わりますように”。かつて,私がかかわり病院で亡くなった患者に祈る。“どうか,あなたたちの無念を繰り返さないように,どうぞ守ってください”。
産婦を診て,トラウベで心音を確認する。元気な心音を聞くそれまでの緊張感,想像していただけるだろうか? 産後,出血が落ち着くまでのしばらく。何かあっても誰にも相談することはできない。クリニックには電話もない。スタッフは私以外皆,素人だ。患者の死に自分が関与する重圧,その時はベストを選んだはずなのに,本当にこれでよかったのだろうか?と繰り返し何度も反芻して考え,そして教科書を調べる。やがて,自分のなかで仕方なかったと納得しようとする。しかし,彼らの記憶は私のなかから消えることはない。
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.