特集 老人保健事業第三次計画と老人訪問看護制度
老人保健事業に対する評価の考え方—特に家庭訪問について
簑輪 眞澄
1
1国立公衆衛生院疫学部
pp.764-767
発行日 1992年9月25日
Published Date 1992/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900573
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はじめに
筆者が初めてイギリスに行った時,勤務していた研究所の中で「えっ,この国では血圧の定期健診をやっていないのですか」と言ったら,「えっ,日本では毎年そんなことをやっているのですか。それで心臓病や脳卒中の予防になっているという科学的な証拠はあるのですか」と言われて絶句してしまったことがある。新薬の製造承認にあたっては,二重盲検法など厳重な研究を行って役に立たぬ薬が市場に出回らないようにチェックされているのに,たしかに血圧測定ではそのような研究を知らないからである。
高血圧を早期発見し,早期治療を行えば,脳卒中の予防になりそうな気はする。しかし,そのことと本当に効果があるかどうかということは,別問題なはずである。第1回日本疫学学会総会シンポジウムでも介入研究が取り上げられたが,循環器健診の効果については,3タ論法を出なかったと解釈している。3タ論法とは「飲ませた,治った,効いた」という論法であり,現在ではこのような論法で薬効を証明することはできない。病気によっては,ほうっておいても改善する症例はたくさんあるからである。
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