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Ⅰ.初めに
老人保健法改正案が昨年(1986年)12月19日、延長国会の会期ぎりぎりに成立し,本年1月1日から実施となったことにより、高齢化社会の進展とともに,わが国における老人医療は一大転換期を迎えている.その一つは,入院中心の医療からホームケア重視の医療への転換であり,いま一つは,疾病治療を中心とする医療から,疾病と老化とを問題とする包括医療,すなわち,予防,治療,看(介)護,リハビリテーション,社会福祉サービス,などを包括する医療への転換である.この両者は,相互関連の動きとなって,これからの老人医療を特徴付けていくものと思われる.
筆者は1984年9月発刊の「公衆衛生」誌老人保健法特集号で,次のように述べている.「老人保健法が施行されて1年数か月を経過したが,この法が,医療サイドは申すに及ばず,社会的にも大きな波紋を投げかけていることは大方の認めるところである.16年間,老人医療に取り組んで来た病院にとって,老人保健法の制定は,地域老人に対して,全人的医療ケアサービスの提供を可能ならしめてくれるものと信じて疑わなかったのであるが,現実は誠に厳しく,国の医療財政の建て直しのみが優先されており,未だに医療現場は,とまどいの最中にあり,入院治療から在宅医療への転換は,老人が老人をみるという,ぎりぎりの状態の中で,各地での悲劇も報道されているのが実態であるといえよう.申すまでもなく,老人医療においては,単に治療だけではなく,福祉,保健を包含した体制が要望されるところであるが,地域医療を志す一病院が,キュアをベースとしたケアを,ケアをベースとしたキュアを,いかなる形で実施していくか,老人医療の将来像への模索をも含めて述べてみたい」1).
そして老人保健法施行から4年目の今日,老人保健施設のモデル創設の実施までの,医療現場でいかなる対応をしてきたか,加えて,将来の見通しについて述べたいと思う.
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