特集 多様化する在宅ケアシステムと看護職の役割
特別区における集約型の訪問看護システムと専任看護職の役割—「在宅ケア」システムの要として
足立 紀子
1
1世田谷区衛生部
pp.201-206
発行日 1990年3月10日
Published Date 1990/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900034
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I.在宅ケアと訪問看護
最近,在宅ケアと表現しながら,それらの定義や描いているイメージが,用いている人によってかなり違っていることが多い。この特集のテーマは,在宅ケアシステムのあり方を考えることをねらいとしているが,特別区の現状を概観しても,いま「在宅ケア」と一言で表現できるほどには,私のイメージする“在宅療養者と家族を地域社会のなかであらゆる側面から支える包括的なシステム”は見当たらない。いわゆる保健・医療・福祉それぞれの分断されたサービスを「連携」という名のもとに必死で繋ぐ努力をしているのが,実情ではないかと思う。疾病や障害をもった人びとの援助過程のレポートや各種検討委員会の報告書などには,しばしば「連携図」が示されているが,システムとして確立していることは少なく,ほとんどが個人的努力による連携もしくは形式的な協議の場になっているように思う。そこで,本稿では,在宅ケアサービスの一部を担っている「訪問看護」という看護専門サービスを中心に,特別区(23区)におけるシステムの現状を示し,なかでもこの事業を特定の組織に位置づけ,集約的な実施方法をとっている自治体の成果と課題を整理していこうと思う。さらには,今後,高齢化社会において最大の課題となる,在宅療養者の健康と生活維持を確保するための実効ある訪問看護システム,ひいては広く在宅ケアシステムに発展させる条件などについても考えてみたい。
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