特集 公衆衛生はどう変わるか—保健所法改定を機に
[保健所法改定をめぐるキーワード]
特別区型保健所
前田 孝弘
1
1豊島区池袋保健所
pp.892-896
発行日 1993年10月25日
Published Date 1993/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900785
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はじめに
今回の法改訂についての議論が公衆衛生の使命や必要性についてのコンセンサスに至らなかったこと,また現在の公衆衛生の科学的評価を共通の土台とした議論に発展しなかったことは残念なことである。ここでは,公衆衛生を「個別保健医療サービスだけでは解決できない問題に対して,地域特性に応じた最適の健康づくりシステムを構築することにより地域の問題解決能力を高める方策」と一般的に考えておく。つまり「解決すべき健康問題」に対して,「それに対する問題解決能力を高める」方策であるとして話を進める。さらに保健所をめぐる議論を「守るも攻めるも」というように矮小化しないために,23区の公衆衛生の現況についての評価を概括的に述べ,その上で今回の法改訂について言及する。
評価はいきおい厳しいものになるが,宮沢賢治の『よだかの星』の中に,「よだか」は鷹に苛められたから「星」になれたのではなく,日々自分が食べている羽虫の気持ちに思いをはせ,自分の存在を厳しく見つめたからこそ「星」になれたのではないかとある。言い訳は進歩の敵だが,自己批判は進歩の必須条件と考える。
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