発言席
肺結核症の今日的意義について思うこと
沢田 勤也
1
1千葉県がんセンター医療局
pp.963
発行日 1988年11月10日
Published Date 1988/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207633
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かつて経験したことのない目ざましい社会環境の変革のなかで結核対策はさまざまな変貌をとげ今日に至っている。いま,その特徴はと問われれば,①結核患者の高齢化,②低肺機能保持者の増加,③入院治療の適応基準の変化,④結核の集団発生の危険要因の増大が挙げられよう。いずれもが結核の対策からみて社会的意義が大きいと考える。まず,患者の老齢化は必然的に糖尿病など代謝性疾患,心筋障害,脳梗塞など循環器障害が多くなり,さらには肺癌の合併率が高いといわれている。全国療養所の調査でも入院患者は高齢ほど多くなり,合併症も60%以上と高率である。また高齢化に伴う肺気腫,肺線維症などの肺合併症も増加し,呼吸訓練のニーズも高くなる。このような実態のなかで,保健婦が在宅患者を訪問指導するとなるとこれの対応は容易ならざる場合があろう。つまり結核症の知識のみならず全身疾患,合併症の知識も必要となり,地域医師との連携活動を通じ,本人,家族への協力,指導がなによりも大切なこととなる。
次に在宅か入院かの判断は,RFPの登場により,化療開始後4か月で感染の危険はほとんど消失するような時代となった今日,たとえ排菌があっても必ずしも入院の必要はないものとする結核病医もみられるが,一般的には,初回排菌者は,4か月か6か月の入院が望ましいと考える。
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