巻頭言
結核死に思う
川城 丈夫
1
1国立療養所東埼玉病院
pp.3
発行日 1996年1月15日
Published Date 1996/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901172
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昨今,日本は世界でも屈指の裕福な国であると報道されている.しかし,実際には日本は貧しい国であると私はつくづくと思い続けてきた.それは日本において基礎学問・研究の分野に配分される予算が先進国におけるそれに比べその差が実に大きかったという留学経験によって得た実感によっていた.その後約20年の年月が経過した現在まで,私はその思いを抱き続けている.しかし,最近また別のことで日本はまだまだ貧しい国であり,表面的な物質の豊さに迷わされることなく,明日の日本の文化の基礎を構築することを地道に考え続けるべきであるという感を一層強くした.
日本での結核は終戦後の混乱期を経過し,その後順調に減少した.日本は世界で結核を最も早く減らした国である.この点で日本は優れた国である.
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