フォト
生きる
田邊 順一
1
1日本写真家協会
pp.961
発行日 1988年11月10日
Published Date 1988/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207632
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宮本範義さん、七十九歳。妻子と別れて独り暮らし始めて二十四年になる。こんな風になるとは、初めは思ってもみなかった。
戦後始めた食堂の経営に失敗し、金を作るために逃げるように郷里熊本をあとにする。五十五歳のときだった。神奈川県藤沢市の団地造成工事を請負っていた友人を頼り、初めての土方仕事についた。不安もあったが、他に手っとり早く金を得る手段がみつからなかった。ほとんど休みなしで働らき、郷里へはせっせと送金した。しかし、それも長続きはしなかった。高齢の宮本さんは不利だった。あせった。それがタコ部屋入りにつながった。
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