八丈の島から
補遺2 八丈後記
膳亀 和子
,
古川 千寿子
,
上田 きよえ
,
川嶋 紀枝
,
小座間 浄
,
八代 悠紀子
pp.72-73
発行日 1969年1月10日
Published Date 1969/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204369
- 有料閲覧
- 文献概要
帰ってみると
私達が帰京してひとまず落ち着いたところは,日本医科大学の同窓会館の一室。
「ああ,とうとう帰ってきた」という安堵の気持とともに,ふと前からここにいたような時の流れの錯覚に陥いる。小さな空港の手すりに溢れるまでの人垣の声,手を振る姿がすでに遠く,一面の絵をかいま見たような気さえする。しかし,1時間前までは事実八丈島にいたのであり,そこには私たちの1年余の足跡が残されてきたのである。部屋の隅にある手荷物のくさやの臭い,おみやげの観葉植物,そして3人の胸に輝やく珊瑚のブローチ,それぞれが八丈の香りであり思い出なのである。「憩室」的時間的空間!! 過去において,1度ならずそういう感じを抱いたことはあったがそれはあくまでも1つの場面であり,1〜2週間のできごとであった。なぜ八丈での生活が,私にとって「憩室」として感じるのであろうか。大海にポツンと置かれた島,そこには一口には言い表わせない歴史があり,自然があり,人びとの生活がある。今では,飛行機が飛び,自動車が走り廻り,本土と同時にニュースが伝わるようになった。
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.