八丈の島から
第16回 わたくし達の失敗
膳亀 和子
1
,
古川 千寿子
1
,
上田 きよえ
1
,
川嶋 紀枝
1
,
小座間 浄
1
,
八代 悠紀子
1
1町立八丈病院
pp.68-69
発行日 1968年11月10日
Published Date 1968/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204323
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赦免花
むかし,浄土宗宗福寺が大賀郷の馬路にあった頃,その裏山に2株のそてつがあったそうである。延亭4年無実の罪で流された江戸麹町竜眼寺の僧慈運が植えたと伝えられ,この僧が身の潔白を叫び続け,ついに断食して果てた後,このそてつに花が咲けば必らず数人かの流人がゆるされて江戸へ帰ることができると語り伝えられた。島の郷土史家によれば,明治20年に没した流人近藤富蔵の筆になる「八丈実記」には,このそてつに花が咲いて1度に数十人の赦免が行なわれた事実が文政年間から明治にわたって数回記されているという。
うれしさを人にも告げん さすらいの 御ゆるしありと赦免花咲く ……ある流人が花の咲いた年に御赦免船に迎えられて島を去るとき詠んだというこの歌は無期刑である遠島を申し渡された人々のただ1つの光明であった「赦免」にかけた気持ちを今に伝えている。
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