連載 身近かな栄養学・5
砂糖
小池 五郎
1
1女子栄養大学
pp.52-55
発行日 1968年12月10日
Published Date 1968/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204345
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砂糖は文化のバロメーター?
日本にはじめて砂糖が伝来したのは,西歴753年,孝謙天皇のときだ,といいます。つまり奈良時代のことで,唐の僧鑑真が朝廷への献上品として黒砂糖を持ってきたのがはじまりです。その後,平安時代(794年-1185年),室町時代(1336年-1574年)の間,ときどき海の彼方から砂糖の製品が少しずつ運びこまれてきましたが,せっかく渡来しても量が少なく,また栽培技術をともなわなかったので,貴族や上流武家階級の人びとの舌をとろかしただけで,みんなどこかへ消えてなくなってしまいました。そのころは調味料としてではなく,むしろ薬とかぜいたく品とかとして珍重されたわけです。
日本ではじめてサトウキビが栽培されたのは1600年前後のことで,奄美大島の人が南シナの方面に漂流したときにその苗を手に入れ,キビから糖をつくる方法も習いおぼえて帰国したときにはじまる,といいます。もっとも,この時代のことはハッキリした記録が残っているわけではないので,本当かどうかあやしいのですが,いずれにしてもまだそのころは,製糖したといってもホンのわずかで,生産量はタカが知れたものでした。
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