連載 保健指導を科学する・2
家族というもの—今までの日本の現実と問題
波多野 梗子
1
1東大・保健学科
pp.77-79
発行日 1966年3月10日
Published Date 1966/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203612
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家族とは
日本の昔の家族は,――現在でも農村にまだその姿がみとめられるが――,先祖代々住みついた家に,家長である父,それに母,長男とその嫁,あるいは次三男,それに家長の孫である長男の子どもを成員とする大家族であった,それにひきかえ,現代の日本の家族の型は,――都市,特に団地においてみられるような--夫と妻,それに子どもという小家族になってきている.一般に,前者は拡大家族,後者は核家族と呼ばれ,全国的にみても核家族の占める割合が増加してきている.
家族は,このようないずれの型においても,婚姻によって作られた1組の夫婦関係がもとになつて,親子関係が生じた親族の単位であって,ほとんどの場合血のつながりのある人びとである.それと同時に,家族は普通,同じ住居に住み,それが消費の単位ともなっている.(この側面は,普通,世帯とよばれており,これには一つの消費の単位に含まれる家族以外の人,たとえば同居入,使用人も含まれることになる).また,家族は個人と社会との相互交渉を媒介する小集団であつて,家族の内でまとまって対外的には一つの単位として機能し,さらに祖父の代,父の代,子どもの代と構成員の変化にもかかわらず,制度として存続していくのである.特に前近代的な封建的社会においては,個人の生活や行動は全面的に家によって規定され,個人の権利より家の維持のほうが優先されていた.
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