医療保障講座第10回(最終回)
わが国の社会保障のあゆみ—医療保障,医療制度の転機
吉田 秀夫
1
1法政大学
pp.69-72
発行日 1964年8月10日
Published Date 1964/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203193
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終講にあたり
本講座も今回をもって最終回となった.医療保障講座と題して書きはじめたこの講座が,若干は国際的な動向を歴史的にとりいれながらわが国の社会保障,そのなかでも医療保障の明治維新いらい終戦にいたる明治,大正,昭和のもろもろの歴史をたどり,さらに終戦によって,とくに占領中にいかに医療制度,公衆衛生,医療保険,ひいては社会保障全般にわたって改革され,変質されてきたかを,1959年(昭34)1月実施の新国民健康保険法—皆保険政策までの動向を,刻明に追ってゆきながら前回までのべてきた.
ところが,実際にはそれ以後の動向にこそ,いま私たちが問題にしなければならないはげしい,そして複雑な動きと課題がつぎつぎとだされてきたということである.その点一番肝心の医療保障,医療制度きりかえのもろもろの芽について,これまでと同じきめのこまかさで論述することができなかったことを心のこりに思う.また医療保障といいながら,それは歴史的発展過程に終始してしまって,それらの制度の現状を,先進諸国のそれと比較しながら,どのような日本的な特長—不合理,矛盾をもっているか,それをいかに改善,改革しなければならないのか,それらと関連して公衆衛生—保健婦活動はいかにならねばならないかをまともにふれることができなかったことを申しわけないと思っている.
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