医療保障講座第3回
わが国の社会保障のあゆみ
吉田 秀夫
1
1法政大学
pp.69-72
発行日 1964年1月10日
Published Date 1964/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203028
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明治時代の救貧制度と民間救療事業
社会保障といわれる現在の制度にいたるまでの国際的な推移はすでにのべたとおりである,これらはどの国でもそれぞれ資本主義のおいたちや発達の状態によってことなってくるものである.日本は日本なりの成長をみたのであるが,先進諸国とくに西欧諸国のような発展のあとはたどらなかった.ふつういわれるように社会保障においてもきわめて後進国であった.
明治維新(1868年)というのは,イギリスやフランスその他の国々のように封建社会よりいきなり典型的な資本主義社会にうつりかわったものではない.徳川幕府や大名小名の封建支配はなくなったけれども,明治新政府のもとに,長い間古くさいものをいっぱいのこしていた.とくに農業や農民の状態は徳川時代とたいしてかわりはなかった.工業が全国のおもな都市にたくさんできるようになったのは,明治30年代(20世紀のはじめ)になってからといわれている.
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