新しい医療と厚生行政
社会保障制度と医療需要
厚生行政研究会
pp.326-327
発行日 1985年4月1日
Published Date 1985/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208563
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日本国憲法第25条「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する.国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障,及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない.」の理念の実現のため,わが国においてはきめ細かな社会保障制度が敷かれている.人口当たり医師数など,欧米先進諸国と比して決して少ないわけではないにもかかわらず,わが国の医療機関の待合室の混雑の度合いは他に類を見ないといった現実から,一般的にいって,わが国は非常に医療を受けやすい国であるということができよう.ここでは,社会保障制度のうち医療費保障の側面について論ずることとしたいが,医療費保障制度は,歴史的にその目的を「国民が医療を受けやすいようにする」ことに定めてきたので,当然のことながら医療需要を喚起する結果を生んでいる.昭和36年の国民皆保険達成以来,更に昭和48年の老人医療費の無料化や高額療養費制度の導入以来,受療機会が増大し,国民医療費がGNPの伸びを大きく上回って増加傾向を示してきたことは周知のことである.
国民が医療を受けやすい状況が一応は整った現在においては,医療費保障制度はその視点を「国民により適正な医療を供給する」ことに移行させてきているが,これは必ずしも医療需要を喚起するとは限らない.
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