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文学—作品の読み方をつかむこと
長谷川 泉
1
1医学書院
pp.47
発行日 1963年10月10日
Published Date 1963/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202950
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1.文学概念をつかむには
文学入門書といわれるものがいくつかあります.それらのなかで容易に入手でき,信頼のできるものは桑原武夫「文学入門」(岩波新書)伊藤整「文学入門」(カッパ・ブックス)加藤周一「文学とは何か」(角川新書)などです.この3書のうち,いちばん程度の高い書き方をしているのは伊藤整の「文学入門」です.といってもいずれも,一般の読者に啓蒙的な知識を与える目的で書かれたものですから,いくら程度が高いとはいってもしよせんは入門書にすぎません.もし文学についてのかなり高い知識を求めようと思ったら,これらの本を卒業してから,さらに本間久雄の「文学概論」(東京堂)や土居光知の「文学序説」(岩波書店)やモールトン原著,本多顕彰訳「文学の近代的研究」などを読破する必要があります.しかし,これは皆さん方の負担の限界をこえるものでしょう.
文学入門書は,巨視的に文学とは何かを把握するために読むものであって,そのような入門書,概論書だけをいくらたくさん読んでも,それだけでは文学の神髄にふれたことにはなりません.文学とは何かということは人によって考えが違いますから,最後には,あなた自身の文学をつかみとることが大切です.それには,具体的な作品を読むことが必要になります.
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