Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
加藤周一の『日本文学史序説』—精神医学書としての文学作品
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.954
発行日 2025年9月10日
Published Date 2025/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220530090954
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加藤周一(1919〜2008年)は1975(昭和50)年に発表した『日本文学史序説』(筑摩書房)の巻頭を飾る『日本文学の特徴について』のなかで,日本文化における文学の重要性を指摘して,「各時代の日本人は,抽象的な思弁哲学のなかでよりも主として具体的な文学作品のなかで,その思想を表現してきた」と述べている.
加藤によれば,「日本の文化の争うべからざる傾向は,抽象的・体系的・理性的な言葉の秩序を建設することよりも,具体的・非体系的・感情的な人生の特殊な場面に即して,言葉を用いることにあった」のであり,その結果,「日本の文学は,少くともある程度まで,西洋の哲学の役割を荷い」,「思想の主要な表現手段」になってきたというのである.
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