映画
大阪の女
外輪 哲也
1
1ぐるーぷ・まさぐらん
pp.74-75
発行日 1958年5月10日
Published Date 1958/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201645
- 有料閲覧
- 文献概要
大阪の天王寺界隈に,上方漫才,落語,浪曲などの口八丁手八丁の芸人が集った「芸人村」がある.その九尺長屋の2階の1つにお千と半丸の親子が住んでおり,これを演じるのが京マチ子と中村鴈治郎.彼女をめぐる2人の男,米太郎に船越英二,宗二に高松英郎アプレ娘の小野道子,角梨枝子,小夜福子,丹阿弥谷津子,山茶花究などの助演陣の他に大阪の芸能人が総出演している.
物語は喜劇的に進められて行くが描こうとするものは,踏まれても裏切られてもなお人生を底ぬけに明るく生きて行く女であり,その根底には「大阪気質」の根強さが横たわつている.数年前,「夫婦善哉」「わが町」「猫と庄造と二人の女」など一連の関西物がスクリーンを騒わがしたが,今年もこの「大阪の女」を始め「おはん」(豊田四郎演出),「暖簾」(川島雄三演出)などで関西ブームが起りそうである.大阪物の特長は,喜劇的・庶民的であり,古風な因習にもとらわれているが,なによりも魅力的に感じるのは気取りがなくて旺盛な生活力と庶民の人生の悲喜劇を身近なものとしてにじみ出す点である.
Copyright © 1958, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.