教養講座
古い女と新しい女
松本 一郎
pp.143-145
発行日 1957年10月15日
Published Date 1957/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910454
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ある文壇批評家が,今のわが国の文学界は才女時代だといつた。新人女流作家が大流行だという意味である。しかしこういうウラには,もしその女流作家が,女でなく男だつたら,これほどはもてはやされないだろうという苦笑がひそんでいる。女だということでトクをしているというのである。また,ある批評家—これはレツキとした仕事を幾つかのこし,わが国の芸術家としては最高栄誉の賞をうけている批評家が,次のように云つていた。昭和時代の女流文学者のなかで,女という特権やハンデキヤツプなしに本当にすぐれていたホンモノの小説家は,宮本百合子と林芙美子の2人しかない。—こうなると,あとはみんなニセモノということになりそうだ。
そのニセモノの1人,最近では女流作家というよりはスタイル社の副社長といつたほうが世間に知られている宇野千代が,「おはん」という小説を書いた。ニセモノかホンモノかはとにかくとして,おどろくほど古風な作品である。中央公論社発行で定価は300円。
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