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ハイライト
O
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T
pp.76
発行日 1958年5月10日
Published Date 1958/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201646
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人工心肺
心臓の先天性の奇形などで心臓の内部の手術をする時には,どうしても心臓を開いてその部分を実際に目で見ながら行わなければならない.ところが心臓は絶えず搏動して血液を全身に送つている器官なので,それをただ開けてしまえば忽ち大出血を起して死んでしまう.そこで最近我国でも実用の域に達した人工心肺が使われる事になる.
これは結局心臓の代りに機械のポンプを使い,それに血液に酸素を与える人工肺臓の装置がついている.生物の体細胞に本当に必要なのは酸素で,血液はそれを運搬する乗物の様なものだから,酸素化しない血液をいくら送り出しても役に立たない.この人工心肺を使えば,人間の本当の心臓,肺臓は一時いらなくなるので,その間に手術をする訳である.今の所,約20分位しか人工心肺に頼ることは出来ないが,その中きつとも長い間出来るようになろう.その上近頃は,心臓が術中にもピクピク動いていては,手術がやりにくいから,カリウム化合物を使つてそれをとめて,落着いて手術をする事も出来る.本当に,人工衛星には及ばないが医学の進歩もめざましいものがある.将来がたのしみだ.
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