映画紹介
女が階段を上る時
外輪 哲也
pp.48
発行日 1960年3月1日
Published Date 1960/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201874
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「黒い潮」「隠し砦の三悪人」など数々の名作を残している菊島隆三のオリジナル・シナリオを,「浮雲」で女の哀れさを見事に追及した,女性の哀感を描いては第一人者の成瀬巳喜男監督が,再び主演高峰秀子・森雅之と組んで,今度は銀座裏の酒場街を舞台に,女の生きる道の険しさを追い,「女の生活詩」とでも言うべきものを描こうとしている.
最愛の夫に死に別れて,女1人で生きて行かねばならない圭子(高峰秀子)は,マネジヤー小松(仲代達矢)の紹介で,5年前に雇われマダムになつたが,身持ちが堅く,清潔さを失つていないということは,本物のバーの女になりきれない平凡な女ということでもあり,ユリ(淡路恵子)のように客扱いが天才的で,パトロンも平気で持つて独立するということも出来ず,純子(団令子)のように女給になりきつて,一本だちのマダムになることに夢をかよわせるということも出来ぬ女である.それでも,頼りない兄と母をかかえて生きて行くためには,嫌な客の相手もしなければならない.
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