書評 樋口幸吉先生の著書紹介
悪の生態—日本人にひそむ犯罪の心理
A. S.
pp.46-47
発行日 1958年5月10日
Published Date 1958/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201636
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夏目漱石は「多くの善人がいざというばあい,突然に悪人になるのだから油断がならない」と「こころ」の主人公に云わせている.私がここに登上させた「裁かれる人びと」もけつして特別な人ではなく,みんな私達の隣人だ.幸福を掴もうとして幸福にそむかれた気の毒な人たちだ
それゆえにここに登場する人たちを私は,決して冷たい目でみることはできなかつた.なぜならあなたも私も,悪魔が落し穴をつくつている人生に,毎日を生きているからだ.そこから,人間が,同じ人間を裁いてよいかという問題が突きつけられる.私はこの本でそれにぶつかつてみた.—これは著者の言葉である
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