映画
悲しみは女だけに—(大映作品)
外輪 哲也
1
1ぐるーぷ・まさぐらん
pp.18-19
発行日 1958年2月10日
Published Date 1958/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201570
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溝口健二が死んで以来,大映からベストテン級の作品が出なくなつたと云われているが,この作品はその風評を打ち破るべき意気込みと陣容で固めている.即ち,監督に「愛妻物語」の新藤兼人,キヤメラに三浦賞の中川芳久,更に,美術賞の丸茂孝のスタツフ.キヤストには田中絹代,京マチ子,望月優子(昨年度女優主演賞),水戸光子,船越英二,小沢栄太郎(旧名小沢栄),市川和子,杉村春子,乙羽信子,宇野重吉殿山泰司など.なおこの作品は2年前に民芸によつて公演された「女の声」(新藤兼人作)の映画化である.
尾道のある海岸べりの飲食店"波千島"に,主人政夫の姉秀代がアメリカから三十年ぶりに帰国するとあつて,先妻の子で岡山鉄道局に勤めている浩,フイリツピン人のボクサーと結婚して一児のある芳子,広島で原爆にあい再婚して産婆をやつている秀代の妹の春江,更に,男から男へと流浪している道子も,半年ぶりに神戸からおしかけて来る.浩は30万の金,芳子は建築費と云つた具合に誰もアメリカみやげを狙つているが,秀代の気持は誰にもわからない.秀代は三十年前,家の再興をはかるために,六千円の結納金目当てに見も知らぬアメリカ移民の花嫁になつたのである.だが,現在は家は再興されているどころか,一家の気持はばらばらになつていがみあつている.
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